サポートネット 10月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4【研究の背景・目的】 山梨県では、モモやブドウ等の果樹栽培が盛んであり、地域の重要な特産物となっています。高品質な果実を生産するために、摘果、摘葉などが行われていますが、これまでそれらの素材は活用されていませんでした。また、モモ花弁も外観や色に魅力があることから活用が望まれていましたが、これまでに食経験や活用事例が少ないため安全性が懸念されていました。そこで、これらの素材の安全性評価を行い、特徴ある地域素材としての活用を検討しました。【得られた成果】1.摘果したモモ果実(摘果モモ:図1) 成熟したモモ果実の仁(果実中心部の硬い核の中に入っている種子)には、シアン配糖体が含まれており、生薬としても使用されています。一方で、多量摂取すると中毒事例のあるシアン化合物へと変化する物質でもあることから、摘果モモ中のシアン配糖体の定量およびシアン化合物の定性試験を行い、安全性について検討しました。その結果、摘果モモ中にはシアン配糖体のなかでも中毒事例のないプルナシンは残存するものの、中毒事例の多いアミグダリンは不検出(検出限界以下)であることが分かりました。また、沸騰水中において15分間以上茹でこぼしたところ、シアン化合物は検出されませんでした。さらなる安全性を確認するため、残留農薬試験およびラット雄雌各5匹、投与量2000mg/kgの単回経口投与毒性試験を実施したところ、異常は見られなかったことから、沸騰水中で15分間以上加熱処理した摘果モモは、食品素材として活用できるものと考えられました。活用の第一歩として摘果モモをピューレにし、砂糖を加えて煮詰めた結果、摘果モモ餡を作ることができたため、最中などへの活用が期待されます(図2)。2.モモおよびハナモモ花弁(図3) モモおよびハナモモ花弁についても処理方法を検討しました。沸騰した5%クエン酸水溶液中で5分間茹で、5分間水冷した後、再び沸騰水中で5分間茹で、5分間水冷したところ、シアン化合物は検出されませんでした。生食用品種であるモモ花弁と比較して、観賞用品種であるハナモモ花弁のほうが桃色の色調が強く、シアン配糖体含有量も低かったため、ハナモモ花弁のほうが食品素材として有望であると考えられました。そこで、処理後のハナモモ花弁の安全性を確認するため、残留農薬試験およびラット雄雌各5匹、投与量100mg/kgの単回経口投与毒性試験を実施したところ、異常は見られませんでした。したがって、処理後のハナモモ花弁は食品素材として活用できるものと考えられました。処理後のハナモモ花弁を使用してシャーベットを試作したところ、桃色を付与することができたため、色素剤としての活用も期待されます(図4)。3.ブドウの葉 無農薬のブドウの葉は、ギリシャやトルコなどで長期間の食経験がある素材であることが既に分かっています。ボルドー液(昔から殺菌剤として使用されている硫酸銅水溶液と石灰乳の混合液)のみの散布により栽培されたワイン醸造用の甲州ブドウの葉は、ポジティブリスト制度(残留農薬に関する新しい制度)による規制対象外と判断されたため、活用できると考えられました。また、ボルドー液の散布跡(白い斑点)は、pH3程度に希釈した市販の食酢類による2分間程度のこすり洗いまたは洗浄器による洗浄で除去できることが分かりました。洗浄後は、天ぷら(図5)や塩蔵後、桜餅の皮と同様に餅を包む素材などとしての活用(図6)が期待されます。【成果の応用範囲】 摘果モモおよびブドウの葉は、和および洋菓子製品や料理への活用、ハナモモ花弁は、モモ加工品などに桃色を付与するための色素剤として利用できると考えられます。シリーズ 役立つビジネスサポート【第21弾 公設試の技術紹介】【お問い合わせ先】生活技術部 食品酒類・バイオ科 樋口山梨県工業技術センター Tel:055(243)6111(代) Mail:kougyo-seikatsu@pref.yamanashi.lg.jp山梨県工業技術センターの研究紹介(第7回)山梨県産果実未利用素材の活用に関する研究〜摘果したモモ果実、ハナモモ花弁、甲州ブドウの葉の活用方法を検討しました〜図1 摘果モモ   図2 摘果モモ   餡入り最中 図4 ハナモモ花弁入りシャーベット図5 葉の天ぷら図6 ブドウの葉餅図3 モモ・ハナモモ花弁

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