サポートネット 7月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4【研究の背景・目的】 山梨県の代表的地場産業のひとつである貴金属装身具製品は、複雑で比較的小さい形状のものが多く、手磨きが困難であるため、一度に全面を研磨することが可能な化学研磨法や電解研磨法が用いられています。金合金の化学(電解)研磨では、多くの場合に毒性の強いシアン化合物が用いられています。しかし、シアン化合物は廃液処理や試薬管理の手間、作業環境の安全性の点からそれらを含まない研磨液が望まれています。古くから流通しているK18(Au:75%)に対してはシアン化合物を含まない電解研磨液について研究が進められ、それらが利用されることも増えてきました。しかし、地金価格の高騰などの影響によって近年流通量が増加してきたK10(Au:41.7%)に対しては研究も少なく、シアン化合物を含む研磨液が使用されています。 そこで、本研究ではH15,16年度に当センターにて開発された非シアン系電解研磨液をもとに、K10において研磨面が光沢を得られる研磨液、研磨条件について検討を行いました。【得られた成果】 本研究では、K10YG(イエローゴールド)(Au-Ag-Cu三元合金)、K10YG(Au-Ag-Cu-Zn四元合金)、K10WG(ホワイトゴールド)(Au-Ag-Cu-Zn-Pd五元合金)の三種類の異なる組成のK10を試験サンプルとしました。 K18用非シアン系電解研磨液(スルファミン酸、チオ尿素、乳酸、リン酸)を用いてK10WGを電解研磨すると、図1(a)のとおり表面が黒色化しました。成分分析を行ったところS(硫黄)が検出され、表面が硫化していることが判明しました。Sを含んでいるスルファミン酸およびチオ尿素の影響を調査した結果、スルファミン酸を含まない研磨液では研磨面は黒色化せず(図1(b))、表面の硫化はスルファミン酸に起因していることが判明しました。また、チオ尿素がAuなどの貴金属の溶解を促進させる働きがあることが判明しました。 そこで、Auを溶解する働きのあるチオ尿素を主成分として、さまざまな研磨液について検討しました。その結果、K10YG(Au-Ag-Cu)では0.5mol/l硫酸ナトリウム、0.5mol/lチオ尿素、硫酸(pH3に調整)溶液、K10YG(Au-Ag-Cu-Zn)では0.5mol/l硫酸ナトリウム、0.5mol/lチオ尿素溶液、K10WG(Au-Ag-Cu-Zn-Pd)では0.5mol/l硫酸ナトリウム、0.5mol/lチオ尿素、0.1mol/lエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム溶液を用いることで、図2に示すように光沢を有する研磨面を得ることができました。【成果の応用範囲】 本研究では、K18用非シアン系電解研磨液では光沢面を得ることができなかったK10において、光沢面が得られる電解研磨液を調製することができました。圧延材料については、本研究で調製した非シアン系電解研磨液を利用することで、毒性の強いシアン化合物を使用しない研磨工程へと改善できると考えられます。シリーズ 役立つビジネスサポート【第18弾 公設試の技術紹介】【お問い合わせ先】生活技術部 研磨・宝飾科 望月山梨県工業技術センター Tel:055(243)6111㈹Mail:kougyo-seikatsu@pref.yamanashi.lg.jp山梨県工業技術センターの研究紹介(第4回)K10金合金の電解研磨に関する研究〜非シアン浴で電解研磨ができるようになりました〜

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