サポートネット 6月
4/12

Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4【研究の背景・目的】 近年、自動車を代表とした各産業において、非鉄軽金属部材が多く用いられています。このような部材は成型加工後、熱処理を行うことが多いですが、その殆どは間接加熱による熱処理炉を利用しています。 熱処理炉による処理では処理品が熱にさらされる時間が長いため、金属結晶の成長による素材強度の低下や変形といった影響が生じることがあります。この問題の解決には、短時間での熱処理が有効と考えられ、高強度・低変形といった高機能化を達成することが期待されます。短時間での熱処理を実現するための加熱方法として、誘導加熱が上げられます。(図1)誘導加熱は電気炉などによる加熱(間接加熱)とは異なり、加熱対象物が自ら発熱することで急速な加熱が可能となる技術です(直接加熱)。また、加熱コイルの形状を変えることで、部分的に加熱を行うことができます。【得られた成果】 この技術を使用して、ダイカスト用のアルミニウム合金に対して熱処理(溶体化処理)を行いました。ダイカスト用のアルミニウム合金は熱処理のような高温下で加熱をした場合、その内部にポア(空孔)やブリスタといわれる欠陥が生じてしまい、製品外観や強度に悪影響を及ぼすことがあります。このため、ダイカスト用のアルミニウム合金には熱処理があまり行われていませんでした。 誘導加熱を用いた短時間熱処理を施した試験片と、比較のために作成した電気炉を用いた長時間熱処理を施した試験片の断面を観察した結果が図2になります。電気炉による処理ではポア(図2中に見られる黒色部)の発生が顕著ですが、誘導加熱を用いた短時間の熱処理では、処理時間が短いほどポアの発生が低減できることが確認されました。また、機械的強度(硬さ)も上昇していることから、この技術がダイカスト製品のさらなる高機能化に寄与することができると考えられます。【成果の応用範囲】 本研究成果は、自動車産業を主なターゲットとして開発を推進していますが、熱処理技術のため家電製品などを含め、極めて幅広い適用範囲が考えられます。シリーズ 役立つビジネスサポート【第17弾 公設試の技術紹介】【お問い合わせ先】担当名 高度技術開発部 鈴木山梨県工業技術センター Tel:055(243)6111㈹Mail:kougyo-zairyo@pref.yamanashi.lg.jp山梨県工業技術センターの研究紹介(第3回)誘導加熱を利用した非鉄軽金属への短時間熱処理技術の開発図2 熱処理後の試験片の断面図1 誘導加熱による短時間加熱誘導加熱加熱時間温度間接加熱(電気炉など)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です