サポートネット 11月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4シリーズ 役立つビジネスサポート【第10弾 海外進出動向】日本貿易振興機構 途上国貿易開発部 アジア支援課 課長代理 石川 宗範モノ作り企業のタイ進出事例 ジェトロバンコク事務所には日本企業が対タイ投資時に進出準備室としてご利用いただけるビジネスサポートセンター(BSC)を有しています。今号では、BSCを利用してタイに進出したモノ作り企業の事例をご紹介します。特に「販路拡大・顧客開拓面での工夫」「進出前の想定と異なった点」「進出してよかった点」などについて取り上げます。事例1.繊維業(輸送機器関連部品など)(販路拡大・顧客開拓)販売先となる業種を集めた業界ダイレクトリーがタイで出版されているため、同資料から連絡先を探して営業を行っている。先方に日本人がいれば、1度は会ってくれる可能性が高いため、自社の日本人駐在員がアポイントを取り、タイ人の技術者と訪問する。日本人同士で一通りの紹介や概要を話し、先方のタイ人と同行させたタイ人で細かな技術面の話を行うなど役割分担をしている。(想定と異なった点)タイ国内の輸送機器部品市場の拡大するスピードが速く、ビジネスチャンスが想定より大きかったこと。一方、免税措置などタイ投資委員会(BOI)から恩典を得るためにBOIの認可を取得したが、そのために当該分野以外のビジネスを開始する際の自由度が想定以上に制限されてしまったこと。事例2.電気機械器具製造(販路拡大・顧客開拓)自社商品は日本国内では知名度が高いものの、海外では無名に近い。そのため、日系企業に的を絞って営業を行い、自社商品を使用してもらった日系企業から他の日系やローカル企業を紹介してもらうよう、顧客からの紹介をつなげていった。(想定と異なった点)当初予想していた以上に、女性ワーカーが勤勉だった。一方、洪水被害を避けるために進出時に相当調査を行ったが、2011年の洪水はそれを超える規模の洪水だったため多大な被害が出た。事例3.自動車・電気機器部品関連の試作など(進出してよかった点)当初想定していた以上の仕事量で、かつ多岐にわたる仕事や要望があったこと。日本ほど系列の縛りが厳しくないため、多数のプロジェクトを受注できたり、顧客のグローバル展開に関する仕事を受注した場合にはタイ以外の仕事も得ることが出来た。また、タイに子会社を持ったことで、日本本社内にタイ子会社には負けたくないという気概が芽生え、本社の士気が上がり、結果として本社の業績も上がった。(想定と異なった点)タイ人従業員の教育に想定以上に時間がかかっていること。例えば仕事上で解らないことがあった場合、その時点で作業を中止して放置してしまうことや、解らないのに「解りました」と自分なりに解釈して取組むため、以降の作業に不具合が生じるケースが散見された。また、「5W1H」「報・連・相」などの習慣が希薄なため、朝礼などの機会に忍耐強く時間をかけて教育している。事例4.金属部品製造・加工(販路拡大・顧客開拓)基本的に一般的な営業方法で、アポイントを取って説明を行っている。その際、簡単な仕事であれば実力をつけてきたタイ企業が競合相手になるため「価格はタイ並、サービス・品質は日本並」を目指していること、加えて日系ならではのスピードや技術をアピールして差別化を図っている。また、材料や設備メーカーなど自社と異なる分野の企業から顧客を紹介してもらえることもあるため、様々な分野の企業とネットワークを築くようにしている。 上記で紹介した点に加えて、次の3点を指摘する声も多い。それは、日系企業といえども、実際に仕事をしているのはタイ人であるため、タイやタイ人に理解を示すことが重要。タイには日本語人材が多く、日本食も普及しているため外国だという認識が鈍りがちになってしまう。自分がタイで仕事をしているという自覚を持ち、タイを理解するために日々勉強する必要があること。2つ目に、労務管理についても、タイだからといって、特別な事をしているわけではなく、日本でも行っているように従業員を大事にして、従業員の声に積極的に耳を傾けることで、かなりの部分の労務上のトラブルは避けられること。そして最後に、日系企業の進出が多いということは、顧客となる日系企業が多い反面、同業種のライバルも多いということ。さらに、タイ企業も実力をつけているため、日本で業績が厳しいからタイに進出すればなんとかなる、という考えは禁物で進出時には入念な準備をする必要があること。 ジェトロ山梨には、海外進出に役立つ情報や専門のアドバイザーもおりますのでお気軽にお問い合わせください。《お問い合わせ先》日本貿易振興機構 山梨貿易情報センターTEL:055-220-2324 FAX:055-244-1231http://www.jetro.go.jp/yamanashi

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