サポートネット 10月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4シリーズ 役立つビジネスサポート【第9弾 海外進出動向】山梨県立大学 理事 波木井 昇タイの近況(その2) 前号で、2010年くらいから新たなタイへの日本企業の進出ラッシュが続いていると記載しました。まず、これについて少し詳しく見てみたいと思います。タイへの外国からの直接投資(申請ベース)は、2010年2,361億バーツ(1バーツは約3円)、11年3,963億バーツ、12年6,480億バーツ、13年上半期2,786億バーツと増加傾向にあります。この中で日本からの直接投資は、10年1,044億バーツ(前年比34.9%増)、11年1,938億バーツ(同85.6%増)、12年3,740億バーツ(同93.0%増)と、伸び率が年々大きくなり、13年上半期も1,842億バーツと高水準を維持しています。これにより、外国からの直接投資に占める日本のシェアは、10年44.2%、11年48.9%、12年57.7%、13年上半期66.1%と、このところ急速に上昇しており、タイでの日本企業の存在感が一段と高まっていることが窺われます。この背景としては、08年のリーマンショック後の円高傾向や国内市場の縮小に加え、日本企業による中国向け投資姿勢が慎重になってきたことなどが考えられます。 タイへの日本企業による直接投資を業種別(農水産業・農水産加工やサービスを含む計7業種)に見ますと、「機械・金属加工」(輸送機械を含む)が、件数・金額とも、全体の半分程度を占めています。また、「サービス」(小売り、外食産業など)は、製造業に比較し金額はまだ大きくはありませんが、件数では着実に増えており、13年上期には業種別シェア(件数)が15.9%と、「機械・金属加工」(47.4%)に次いでいます。 タイにおける日本の製造業の立地は、バンコクや周辺部(北部のアユタヤや東部のチョンブリ・ラヨーンなどを含む)に集まっていますが、バンコクから車で北東に3時間弱程のナコンラチャシーマー(通称コラート)にも、日本企業が進出しており、山梨県内に本社や事業所のある企業2社もコラートに工場を設けています(操業開始はともに1990年代後半)。このうちの1社がコラートにあるナコンラチャシーマー・ラチャパット大学(国立大学)の日本語学科と交流していたことが縁となって、山梨県立大学ではラチャパット大学と、教員間・学生間の交流を進め、2011年3月に両大学は大学間協定を締結しました。そして、留学生を相互に受け入れたり、県立大学の卒業生(日本語教員養成課程修了者)がラチャパット大学教員として日本語教育をサポートするなど活発な交流が行われています。タイへの日本企業の進出がさらに進む一方で、タイ側の日本への関心が高まっており、両国の地域間レベルでの様々な交流の進展に向けて、県立大学としてもこれまで以上に関わっていきたいと考えています。 さて、企業が今後のタイでの事業展開を考える際には、2015年に予定されているアセアン経済共同体(10カ国)の完成を視野に入れておくことが必要です。アセアン自由貿易協定に基づき、関税自由化が2段階にわたって実施されつつあり、既に2010年に先発アセアン6カ国(シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)では関税自由化が実現しています。先発アセアンとの所得格差を考慮して、後発アセアン4カ国(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー)については、関税自由化が先送りされてきましたが、2015年に実現の見込みです。それにより域内人口6億人超の巨大市場が形成されます。4か国のうち、タイの北西の隣国ミャンマーでは、2011年3月に誕生したテインセイン政権のもとで、一気に民主化が進み、アメリカやEUが経済制裁の緩和に動き出したことや外国投資の受け入れ態勢を整備し始めたことから、アジア最後のフロンティアとして、外国企業が投資を開始しています。タイ政府はバンコクの西方に位置し、アンダマン海に面したミャンマーのダウェイ地区での深海港や工業団地の整備で協力しています。ミャンマーの一般労働者の平均賃金はタイや中国の約5分の1で、アセアン域内では最も低い水準です。タイでは賃金が上昇し、バンコク周辺では労働者が集めにくくなっており、7月に発表されたバンコク日本人商工会議所の調査によれば、タイの日系企業は低廉な労働力を活用した生産拠点や今後の市場として、ミャンマーを有望視しているようです。

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