サポートネット 9月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4シリーズ 役立つビジネスサポート【第8弾 海外進出動向】山梨県立大学 理事 波木井 昇タイの近況(その1) 今回と次回で、経済産業面を中心にタイの近況について報告いたします。 タイは人口が65百万人(日本の約半分)、国土面積が51万平方㎞(日本の1.4倍)で、経済規模は3,650億ドル(2012年名目GDP)と日本の6.2%程度ですが、アセアン10カ国の中では、インドネシアに次ぐ水準で、1人当りGDPは5,381ドルと、シンガポール、マレーシアに次いでいます。日本とタイとの経済関係は非常に深く、近年更に深化しており、極めて多くの日本企業がタイに生産・販売拠点を有し、活発な活動を展開しています。貿易ではタイにとって日本が最大の相手国になっています(2012年のタイの貿易相手国別シェア上位国:日本15.2%、中国13.3、アメリカ7.4、マレーシア5.3)。 タイ経済は2008年9月のリーマンショック後、2009年にかけて世界経済が大きく落ち込んだ際には、輸出減等によりマイナス成長を余儀なくされ、また、2011年7月頃から3か月以上続いた、バンコク首都圏を流れるチャオプラヤー川流域の洪水により、バンコク及び近隣の多くの工業団地で生産が中断されたことから、同年の経済の伸びがほぼゼロになりましたが、その後は堅調に推移しています(実質GDP成長率:2007年5.0%、08年2.5、09年-2.3、10年7.8、11年0.1、12年6.5、13年4.2〜5.2(タイ政府見通し))。 タイへの外国企業の進出については、古くは1960年代から大手日本企業、欧米企業のタイ進出が増え始め、トヨタ、日産等も進出し、こうした大手に声をかけられた1次下請けの部品メーカーがついて行きました。これに2次下請け以下の部品メーカーの進出が続きました。こうした動きは、いわば大手追随型の進出であったわけです。この結果、タイには、自動車、電機・電子等の産業集積が形成されていきました。85年のプラザ合意後、日本企業の海外進出が進んだ主因は円高でしたが、リーマンショック後は追随型進出は出尽くして、進出の主因は国内市場の縮小及び円高(リーマンショック後から2012年秋まで)です。今、タイに進出しているのは、日本にいても仕事がなくなるので進出した企業が多いといわれています。 タイに来れば必ず商売があるわけではありませんが(以前に比べお客の確保が難しくなっているように感じるとの声が、タイ進出済み企業からは聞かれます。)、タイでは日本国内に見られる系列取引には制約されない取引が可能で、日本並みの品質、日本並みの納期、タイ並みの価格が揃えられれば、系列企業でなくても自動車、電機・電子等の業界では取引が可能といわれています。 少し前に、バンコクのジェトロ事務所で聞いたところによれば、タイに出て来る日本の中小企業が増加する中で小規模企業が増え、初めて海外に出る企業がタイやベトナム等他のアセアン諸国を見てタイを選んでいる、タイに来る理由は部品や素材を供給する裾野産業を含め産業集積が進んでいてインフラが充実しており、また中国などと異なり売掛金の回収が確実であるからなどということでした。さらに、アセアンFTA(自由貿易協定)により2018年にアセアン10カ国間の関税がゼロになり、アセアン市場が一つになると、6億人のマーケットが出来て、どこに立地するかとなると、タイが最も相応しいと見る日本企業が多いということでした。 2010年くらいから新たなタイへの日本企業の進出ラッシュが続いています。一方、2011年に就任したインラック首相は、政策として最低賃金を引き上げており、人件費が上がる傾向にあります。また、タイの失業率が0.7%と低いことからも窺えるように、バンコク周辺の工業団地では一度に大量の人は集めにくくなっており、こうした企業はタイの東北地方に行って人を集めています。 上述の通りアセアンFTAの完成が2018年に予定されていることを見通し、また、タイ国内で人が集まりにくくなったり、人件費が上がっていることから、今後、べトナム・ミャンマー・カンボジアなど人件費が安いアセアン後発国で生産して製品をタイに持ち込むことを考えている日本の企業もあります。 所得水準の上がってきたタイ人は日本の文化や食生活、ライフスタイルなど日本に対し非常に高い関心を持っています。製造業のみならず様々な産業でタイでの可能性があるのではないかと思います。

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