サポートネット 8月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4シリーズ 役立つビジネスサポート【第7弾 海外進出動向】山梨県立大学 理事 波木井 昇インドネシアの近況(その2) 昨年、山梨総合研究所が主宰するアジア研究会(アジアフォーラム21)の有志メンバーでインドネシアを訪問調査しました。いくつか訪問した中で、以下では日系商工会議所(ジャカルタ・ジャパン・クラブ)、東京に親会社のある企業2社(ワイヤーハーネスのメーカー、ばねのメーカー)で聴取したことを、差し支えない範囲でご参考までに記載いたします。〇ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)・インドネシアに直接投資により進出済み日系企業は約1,260社で、うちJCCには約500社が加盟。・このところ毎年のように各州で最低賃金の引上げが行われている。最低賃金引上げを要めるデモがあちこちであり、交通等への悪影響も生じている。・最低賃金のかなりの引上げはインドネシアだけではなく、タイやマレーシアでも行われている。これらの国々では労働組合の活動が活発化している。・親日感情が非常によい。インドネシア独立戦争で日本の残留兵1,000人がインドネシア国軍とともに、オランダ軍と戦った。日本の残留兵の墓は英雄墓地にある。・5年に1回、税制改正がある。2007年改正で移転価格税制が導入された。導入先行で運用面での整備が遅れている。税務担当官の裁量の余地が大きい。・40年前、20年前に続き、今、インドネシアへの第3次投資ブームである。昨年、JJCの会員企業が約40社増えた。前回ブーム時には1989年、90年、91年と年間30社以上増えた。昨年から日本からの視察団が増えている。〇ワイヤーハーネスのメーカー・インドネシアでの操業開始は1993年。従業員は約500〜600人。日本人駐在員2名。・このところ忙しく、今年(2012年)はいい決算になると見ている。・ここに来て最低賃金が上がっており、人件費負担が増えている。・インドネシアの素材はまだ弱い。原材料の約3/4をシンガポール経由で調達(マレーシア、タイ、中国製等)、20%を日本経由(日本、台湾製等)、残りがインドネシア製。・インドネシアは中国と競争している。最終的な売値が中国以下でないとなかなか売れない。・インドネシアでは、制度(法律・条例等)を、まず作ってしまうということがあり、これが気になる。例えば、工場団地外にある工場は、2012年末までに工場団地に移るようにという条例が一端出来たが、反対が多く、2014年末までと延長された。今後、再延長があるかも知れない。・インドネシア進出を検討している中小企業の方々に。『すぐに仕事が見つかるわけではないが、躊躇しているなら早く出てくる方が良い。部品メーカーであれば、日本国内で可能性のありそうなセットメーカー200〜300社を調べておく。インドネシアに来たら、最近少なくなっているが賃貸工場に入居する。機械2〜3台、従業員20〜30人で、試しにやってみる。だめなら、日本に帰る覚悟で。うまくいけば、200〜300人規模にし、給料等払うものは出来るだけ希望通りに払ってやるのがよい。日本人は1〜2名で、総務課で組合の面倒を見るようにする。』〇ばねのメーカー・インドネシアでの操業開始は1997年。従業員は約50人。日本人駐在員1名。この他に、本社から技術者1名、半年毎交代。・ここ4年くらい、インドネシア経済が好調で、オートバイ関連のばねの仕事が増えている。・1997年に日本から機械を持ち込んだ時に、アジア通貨危機の影響で、ジャカルタ周辺でも暴動があり、日系企業の日本人駐在員が帰国するようになった。当時、本社の社長がインドネシアに来ていて、社長が乗った車のガラスをインドネシア人従業員がダンボールで覆い隠してくれた。この時のインドネシア人従業員の気持ちがありがたかったので、そのままインドネシアで事業を続けようと決めた。・材料はシンガポール経由で日本から入れている。日本製の材料の替わりに、韓国製を使ってとの依頼が顧客から来ている。韓国製は日本の7割の価格。・最低賃金が相当に引き上げられていることから、インドネシアに来ている日系企業の間で、5年先のインドネシアは、見通しが難しいとの声が聞こえる。・日本の政府や地方自治体は、企業に海外に出て行ってと言うが、出て行った海外でのことも考えて欲しい。・インドネシアではこのところ、経済発展が進み、お金、お金という風潮が強くなっている点が気になる。

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