サポートネット 7月
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Information magazine that assists in small and medium-sized enterpriseSUPPORT NET4シリーズ 役立つビジネスサポート【第6弾 海外進出動向】山梨県立大学 理事 波木井 昇インドネシアの近況(その1) インドネシアとタイについて、昨年の現地調査も踏まえ、経済や産業面を中心に近況を報告致します。本号と次号ではインドネシアを取り上げます。 インドネシアは1997年~98年のアジア通貨危機に伴う経済混乱の後は、着実に経済発展を遂げ、特に2008年9月のリーマンショック後、2009年に世界中が同時不況に陥った中で、プラス成長が続いたことなどから、その発展ぶりが注目されてきました(2012年実績。実質GDP成長率6.2%。名目GDP8,780億ドル)。加えて、2004年、09年と国民の直接投票による大統領選挙が実施され、民主主義が確立された国家として国際的に認知されたこともあり、海外からの直接投資が急増中です。投資国はアジア・欧米・豪などで、中でも日本、韓国、シンガポールなどが目立っています。 同国は赤道付近にある約13,000もの島々からなる島嶼国家で、東西の距離は5,100kmと、アメリカの東西両岸間5,000kmより長く、面積は189万k㎡(日本の約5倍)、人口は2.4億人で世界第4位です。人口の約89%がイスラム教を信仰していますが、憲法で信教の自由が保障されていて、ヒンズー教、仏教、キリスト教、儒教などの信者もいて、がちがちのイスラム国家ではありません。 経済発展により一人当たりGDPは2010年の2,986ドルから2012年には3,592ドルとなりました。3,000ドル超となると、消費爆発が起こると言われており、実際に同国では消費が急拡大しています。例えば、移動手段として二輪から四輪への移行が進みつつあり、2012年の自動車販売台数は前年比25%増の112万台と初めて100万台を超えました。インドネシアでの日本車のシェアは94.3%と、日本国内での日本車のシェア(約93%)を上回っています。 廉価で豊富な労働力があり、最低賃金はジャカルタ周辺で、月に約16,000円(昨年夏時点)で、失業率が高いこともあり(6.3%)、最低賃金に近い水準で雇用が可能です。なお、最近、最低賃金の引き上げを求める労働者のデモが国内各地で発生しており、各地方ごとに最低賃金を引上げる動きが出てきています。 また、豊富な天然資源を有しています。特に産出量が多いのは、石油、天然ガス、石炭、銅、ニッケル、錫、ボーキサイトなどで、石油以外は輸出されており、日本にとっては、重要な供給国になっています。日本の各資源輸入に占める国別シェアで、インドネシアが第1位であるのはニッケルと錫、2位はボーキサイトとなっています。 人口構成において、若い世代の割合が高く、人口ボーナス期間(15歳~64歳の生産年齢人口比率が上昇していく局面)が、2030~35年までと比較的長く続くと見られています。これにより経済発展が促進され、貧困層の減少、中間層の拡大が続くと考えられます。人口ボーナス期間は日本では1990年頃終了しており、タイ、韓国、中国では2010~2015年に終わると予測されています。 以上を背景に日本企業によるインドネシア投資ラッシュが2011年後半から進展中です。日本からの直接投資は、2011年に前年比2.1倍の15億ドルとなったのに続き、2012年には20億ドル程度に増加した見込みです。特に日系の四輪組立メーカーや1次~3次の下請け部品メーカーが、工場を新設ないし拡張中で、さらに4次や5次下請けメーカー等の進出が増えています。これから自動車部品産業が揃うインドネシアに対し、タイは組立メーカー・部品メーカーの集積が相当に進んでいて、『タイには安定感があるが、競争が激しく、これからタイに出ても参入が容易ではない。インドネシアにはタイの安定感はないが、下請けとしての参入はタイに比べれば容易かもしれない』という県内企業経営者の声もあります。 さて、インドネシアについてはインフラ整備の遅れが指摘されています。ジャカルタ周辺は、かつてのバンコクほどではありませんが、朝晩、交通渋滞が発生しています(写真)。日本のODAで早ければ2013年から都市鉄道(含む地下鉄)の建設が開始予定です。電力については郊外や地方に行くと停電することがあるようである。また、役人の裁量の余地が大きく、法律や制度が頻繁に変更され、企業側が団結して実態にそぐわないとして抵抗すると、変更が緩和されることが、よくあるということです。

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